現在開催中の、写真家・冒険家の石川直樹さんの写真展「この星の光の地図を写す」に行ってきました。
石川さんの写真を見てみたいと思った理由の一つは、「単焦点レンズしか使っていない」とラジオで語られていたからでした。
今回は、写真家・石川直樹さんがラジオで語っていたことや、使っているカメラ、写真展の感想などをまとめました。
写真家・石川直樹さんが語る『単焦点レンズで撮る理由』
石川直樹さんが伊集院光さんのラジオに出演されていて、そこで語っていたことです。(上の写真はラジオで話題に上がった人の頭が写り込んでる写真)
以前にもゲストで来ていたとのことで、
伊集院さんが「ズームレンズを使わないんですよね?」と聞くと、
石川直樹さん「単焦点レンズだけで撮影してます」と答えた。
(※要約です)
その理由は、世界を旅する冒険家の石川直樹さんにとって、自分と世界との距離が大切だからだと。街の人との距離や、シロクマに近づけなかったこと。それが大切だからだと語りました。
もしも「なぜ単焦点レンズがいいの?」と質問されたら・・・
私もオールドレンズに興味を持ってからは、ほとんどが単焦点レンズです。
しかし、もしも「なぜ単焦点レンズがいいの?」と質問されたら、「断然写りがいいからだよ」くらいしか答えられません・・・。
単焦点レンズに、自分と世界との距離という気づいていなかった価値観を与えてくれたことは大きいです。これからの撮影が変わってしまうかもしれないワクワクもするし、ショッキングな話でもありました。
写真家・石川直樹さんが使っているカメラ:プラウベル・マキナ670
石川直樹さんはフィルムで撮影されており、中判カメラで撮った写真です。
ラジオで「蛇腹のカメラ」と言われていたので、ものすごく古いカメラなのかと思ったら、意外と新しめの1984年発売の「プラウベル・マキナ670」というカメラを使われているようです。
蛇腹式の中盤カメラで、石川さんがほかのインタビューで「旅に向いてるカメラ」と語っている通り、小さい!
その理由は蛇腹式のレンズに加えて、レンジファインダーだからでした。中判なのに二眼レフや一眼レフではないんですね(ミラーレス)。
プラウベル・マキナ67の歴史
これが、また興味深い理由で誕生したカメラでした。写真を見ての通り、レンズはNikkorです。日本製のカメラなんでしょうか?
- 1975年、もともとはドイツのメーカー「プラウベル」をカメラ販売店「カメラのドイ」の土居君雄社長が買収。
- 1976年、マキネッテをプラウベルが提案。
- 1978年、マキネッテに不服で日本で設計開発したプラウベル・マキナ67を発表。コニカ設計、ニコンレンズ!
- 1979年、プラウベル・マキナ67発売。
プラウベル・マキナ67は「プラウベル×コニカ×ニコン」という3ブランドの合作カメラでした!
カメラメーカーではない、カメラ販売店の土居社長が作らせたからこそ実現できたカメラですね。奇跡が起こってできたカメラなのでした。
プラウベル・マキナ67の種類
中古の流通価格を調べてみると20万~30万円くらいのようです。高いけど魅力的です。
石川直樹さんは23歳のころに初めて買ったそうですが、人生を買えてしまいそうなカメラですね。
プラウベル・マキナは大きく3種類あって、レンズの焦点距離など違いますので購入予定の方はご注意ください。
- プラウベル・マキナ67:1979年発売、レンズ80mm F2.8
- プラウベル・マキナW67:1982年発売、レンズ55mm F4.5
- プラウベル・マキナ670:1984年発売、レンズ80mm F2.8、220フィルムに対応
石川直樹さんが使っているのはプラウベル・マキナ670です。
石川直樹さんの写真展の感想、世界と原始を旅できる展示。
というわけで、東京オペラシティで開催中の写真展「この星の光の地図を写す」の感想です。
単焦点レンズのプラウベル・マキナ670で撮影された写真はどうだったのか。「石川直樹さんと世界との距離」を意識しながら見ました。
展示はほとんどの場所で撮影がOKでした(後半の一部NG)。
アラスカ山脈~北極圏~南国の島々・・・。世界を旅する疑似体験ができる写真展でした。このサイズのプリントに堪えるプラウベル・マキナ670のNikkorレンズの解像力もすごい。
実は、最初は美しい氷の世界の写真を見ても『スターウォーズ』っぽいなとか、何かの映画ぽいという感想しかなかったのですが、この犬橇のエピソードを見て一気に掴まれてしまいました。
犬橇の男に「スノーモービルを使わないのか?」と尋ねると「機械は壊れたら終わりだよ」と答えた。
極寒の地においてはスノーモービルよりも犬橇の方が安全なんて。これは行った人にしかぜったいに分からないこと。この感覚を行ってもない私に味わわせてくれただけで、もうたまらないですね。
「石川直樹の部屋」にあったメモ。フードにつける毛皮に、
「これを付けると雪が目に入らない」
とある。ちょっとしたメモだけど日本の日常と世界の差に、グサッときました。
それを知ってファーコートを着てる人がいるだろうか・・・。
辺境ということに関しても、「どちらが世界の中心だろうか?」という疑問があったり。
ポリネシアン・トライアングルの広大な海の共通言語の話とか。
世界を旅するだけでなく、人間の原始を旅するようでもありました。
テントに入れたり、石川直樹さんの部屋が再現されていたりというちょっとした体感型の部分も面白かったです。
石川直樹さんの写真展に行って – かつてズームレンズにしたこと。
私も大学生のころにバックパッカーみたいなことをしていたので、石川直樹さんの冒険には羨ましさもありました。現役で、単焦点レンズのフィルムカメラを使っていることも。
何度かバックパッカーをして、初めは単焦点レンズのフィルムカメラRicoh GR1vを持って行ったのですが、それだと街の人などを撮るのに近づかなくてはいけなくてもどかしい。そのあとの旅行では、ニコンの一眼レフにズームレンズを付けて行きました。
だと思えたら、Ricoh GR1vだけにしたのになぁ。いろんな気づきをもらえる石川直樹さんの写真展、ぜひおすすめです!
プラウベル・マキナ67シリーズ