Kodak Angenieux 45mm F3.5(改造レンズ) – 優しいボケでソフトな写り。シネレンズではないけど、憧れのフランス製アンジェニュー。

Hiron
こんにちは、オールドレンズ沼のHironです。(Twitter / Youtube)

コダック×アンジェニューの「レチネッテ」

2018年2月購入。
シネレンズに興味が出て、いつか試してみたいと思っていた憧れのアンジェニューのレンズ。シネレンズでは高くて手が出ないと思っていたところで見つけたのが、ライカLマウント改造品。これが意外にも手ごろな値段だったので購入してしまった!

このレンズはもともとシネレンズではなくて、KODAKの35mmフィルムカメラ「レチネッテ」のレンズ。レチネッテはレンズに、カールツァイス、シュナイダー、アンジェニューとそうそうたる光学メーカーのものが使われていて、アンジェニューはフランス向けに販売されたレチネッテに使用されていたらしい。

ドイツコダック、パトローネ入り35mmフィルム誕生の歴史まで・・・

コダックと言えばフィルムメーカーのイメージで、一般向けのカメラ販売のイメージがない。むしろ、機材の方は映画用の供給がメインなのでは?と。コダックのフィルムカメラの歴史を紐解くと、すごく興味深くて、35mmフィルム誕生の歴史までさかのぼることになってしまった。(ここからは私の聞きかじり、読みかじりなので、正確なところはググってください)

フィルムは映画用に使われたのが先で、それをいわゆる静止画のカメラに転用したのが1925年のライカだった(ライカってやっぱりすごいね!今更・・・)。さらに対抗馬のツァイスイコンのコンタックス。しかしこれらは高価で、一般向けに販売しようと参入したのがコダック。コダックはアメリカのメーカーだけど、このカメラを開発したのはドイツ!ナーゲル社を買収したドイツコダック!

1934年に販売したドイツコダック製のフィルムカメラ「レチナ117」に使われたのが、今は普通となっているパトローネ(カートリッジ)入りの35mmフィルムだった!それまでのライカとコンタックスのカメラでは、フィルムがパトローネに入っていなくて、暗室で装填する必要があったらしい。それは不便・・・。(最初にパトローネ入りフィルムを開発したのはAgfaみたい。Kodakじゃないのかい!笑)

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Anastigmatとは?コダック「レチナ」と「レチネッテ」の違い

このレンズ「Kodak Anastigmat Angenieux 45mm F3.5」と、Anstigmatという文字が入っている。
これは収差を補正していると言う意味で、トリプレットとかテッサー型のレンズ構成ということらしい。それ以前のレンズで収差が補正できていないのは、シネレンズのぐるぐるな写りを見るとよく分かる。トリプレットはMeyer-Optikの発明で、テッサーはCarl Zeissの発明ということでいいのかな?

追記:トリプレットはCooke社の発明でした・・・。こちらの記事で少し歴史を書きました。

 

レチネッテは、このレチナの廉価版としてのちに発売されたもの。いろいろググってると、収差補正されたAnastigmatのレンズとして、上位機種レチナはテッサー型、廉価版レチネッテはトリプレット型が使われているよう。
それにしても、オールドレンズ沼はカメラの歴史の沼でもあるね・・・。シネレンズの時点ですでにフィルムカメラ誕生以前にさかのぼってたのか・・・。

と作例載せるだけのつもりが、前置きがだいぶ長くなってしまった。こういうの知るとよりレンズに興味も沸きます。

上野にて SONY NEX-5R + Kodak Angenieux 3.5/45

2018年4月。桜の時期の上野で試し撮り。
ボケは控えめなんだけど、優しいソフトな写り。友人が持ってるズマリットがふわふわだと言ってたけど、これはそれほどではないのかな?こちらはF3.5なので、明るさがかなり違うわけだけど・・・。
ちょっと逆光に弱いのは、この改造レンズ、なぜか中玉にも傷みたいのがあったからかも・・・。でも、これはこれでちょっと好きな写り。

絞ってちゃんと撮ろうとすれば、なかなか綺麗に写るね。逆に面白味がなくなってしまった。

ソラニンロケ地・和泉多摩川にて SONY NEX-5R + Kodak Angenieux 3.5/45

2018年4月末、このソフトな写りが「ソラニン」のイメージに合いそうだと思ってロケ地に行ってきました。
「ソラニン」は浅野いにお先生のマンガであり、のちに宮崎あおいと高良健吾で映画化もされた作品。人生の進路に悩む若者たちの物語で、春になると毎回このロケ地に行きたくなる。春のもやもや~とした感じの作品なんです。

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作品のファンなので、作例なのか、ロケ地めぐりなのかあれですが・・・

小田急線・和泉多摩川駅を降りたところ。小田急線でもこんなに人がいない駅あるんだというくらい、静か。

最初の写真の左手にあるリバーサイドモールの入り口。

河川敷に向かってまっすぐあるく。河川敷は駅から降りてすぐのところ。この歩道も、たしか漫画の方では使われてた。

この光に弱くてふわっとするのが、レチネッテアンジェニューの特徴なのか、個体差なのか・・・

河川敷に到着。この堤防のコンクリートのこれがソラニンなんですよ~。おそらくF3.5開放。作品のイメージぽく、全部の写真かなり露出高めです。

開放だとピントはシビアだけど、ボケがそれほどではないから、ブラーがかかったみたいのを狙って撮ったりもできそう。女性のポートレートが綺麗かも?

春のこの河川敷はほんとのんびりとした空気。くつろいでる人もちらほら。

グラウンドの隅に赤いビールケースを見つけて。バット入れに使うのかな?
そうそう、この改造レンズのAngenieuxは最短撮影距離50cmくらいになっていた。1mの表示を過ぎてもまわるので、ストッパーを外すなどしているのかもしれない。ネットの情報だと寄れなくて使いにくいという意見もあったので、これはラッキーだった。

例の場所ですね~。露出高すぎでしょうか汗

鉄橋の手前を降りたところには、あのアパートも健在です。

ここを種田が原付バイクで行き来してたんですよね。初めて行ったときはちょっと感動でした。

鉄橋の道に出ると車の通りが多くて、騒々しい。河川敷の時間の止まったような空気感がうそみたいに。

鉄橋は風が強いです。そのまま登戸駅まで歩いて、小田急線で帰ってきました。トップの写真はこの橋のねじを撮影したもの。

というわけで、初のAngenieuxのレンズはソフトで優しい写りでした。このレンズがあったから、ソラニンのロケ地を撮ってみたいなと思ったのも良かったです。狙いの結果はともかく・・・。
実は、Angenieuxを使ってみたいと思って、レチネッテそのものも買ってしまってるので、いつか機会があったらその写りも試せたら。溜まってきたフィルムも今後消化していかねば・・・。

次回は、またまた帰って来たバブルボケレンズ!
日本製のプロジェクターレンズなんです!

つづく。